しろたへの… 分類和歌 「白妙の(=枕詞(まくらことば))袖(そで)の別れに露落ちて身にしむ色の秋風ぞ吹く」出典新古今集 恋五・藤原定家(ふぢはらのさだいへ)[訳] 共寝をした翌朝の別れに露も涙も落ちて、しみじみと身にしむ色合いの秋風が吹くことだ。 鑑賞「袖の別れ」は袖を重ねて共寝した男女が別れること。「露」は涙を暗示し、「秋風」には「飽き」がかけられている。暁の別れに紅涙を絞る袖も、露の降りた庭先の情景も、やがて来る別れの予感のために悲しみの色合いに染まっている。「白妙の袖の別れは惜しけども思ひ乱れて許しつるかも」(『万葉集』)〈共寝したあとの別れは惜しいけれど、私は心が乱れて、あの人を行かせてしまったことよ。〉、「吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな」(『古今和歌六帖』)〈吹いてくると、しみじみ身にしみる秋風なのに、何かにしみこむ色などないと思っていたよ。〉を本歌とし、古歌に詠まれた悲恋の雰囲気を重ねながら、心情と情景とを交錯させ妖艶(ようえん)な美の世界を表現している。 しろたへ-の 【白栲の・白妙の】 分類枕詞①白栲(しろたえ)で衣服を作ることから、衣服に関する語「衣(ころも)」「袖(そで)」「袂(たもと)」「帯」「紐(ひも)」「たすき」などにかかる。出典万葉集 六四五「しろたへの袖別るべき日を近み」[訳] (お互いに)別れるはずの日が近くなったので。②白栲は白いことから、「月」「雲」「雪」「波」など、白いものを表す語にかかる。出典土佐日記 一二・二六「しろたへの波路を遠く」[訳] 白い波の立つ海路をはるばる。 |